春の海氷状況

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しばらく更新をお休みしておりました本ブログですが、ようやく北極にも春が訪れ、北極海の海氷も減少期を迎えました。今年も、本ブログを通して、北極圏に起こる海氷や森林火災などの状況をお伝えしていきたいと考えています。

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早速ですが、右の図は、AMSR-E海氷モニターによる北極海の海氷面積の季節変化です。 なんと今年は5月の海氷域が、AMSR-Eによる観測が始まった2002年6月以降では、最大の面積になっています。冬の間から2~3番目の大きさで推移してきたものが、4月後半になっても減少速度がのびずに、普段より多くの氷が北極海に広がっているようです。

   

   

それでは、今年はどの海域で氷が多くなっているのでしょう。

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の図は、過去7年間(2003-2009年)の間に見られた 5月1-2日の海氷域の分布を頻 別に明るさの違う赤色 で塗り、その上に今年の海氷分布を白-青色(明るさは過去7年間での頻度 を表す)で重ねて表示したものです。例年に比べて、濃い青色ほど氷が多く、また、明るい赤色ほど氷が少ない領域を表しています。

今年は、気象庁の発表にもあるように、オホーツク海(画像の右上)の海氷は少なかったようですが、北極海の海氷は、太平洋側のベーリング海(同上)や大西洋側のバレンツ海・グリーンランド海(同下)、そしてグリーンランド左側のバッフィン湾からデーヴィス海峡(同左下)にいたる、ほぼ北極海を囲む四方の海域に、普段(といってもAMSR-Eが動いている最近7年間の統計ですが)よりも拡張しているようです。

北極海とオホーツク海との間には、上空に極渦と呼ばれるジェット気流が流れています。米国NOAA/CPCの北極振動指数をみると、この冬は大きく正側にふれています。極渦が強化され、寒気が北極海にたまり、オホーツク海をはじめとする中緯度帯にもれにくくなっていたことが推測されます。

それでは、今年の夏は、このまま海氷が大きめで推移するのでしょうか。海氷が夏に融けるかどうかのカギは、海氷の面積だけでなく「厚さ」です。AMSR-Eが観測した輝度温度の画像をみると、そのヒントが得られます。  

AME030420_090420_NDPROD1D_L1C_ESC5KM_103_rgb3RGB_lr2.jpg右の図は、 AMSR-Eの36.5GHz帯および18.7GHz帯の垂直偏波の輝度温度画像をカラー合成したもので、過去7年間の4月20日の海氷状況を示しています。水色に見えているところが海氷域を表しています。一般に海氷が生成・成長し、ある一定以上の時間が経つほどマイクロ波帯の射出率が低下していくことから、画像では、古くて厚い氷(多年氷)は暗く(水色が濃く)、また若くて薄い氷(1年氷)は明るく見えています。
一昨年、昨年と、厚い多年氷の割合が急激に減少してきていることを見てきましたが、今年の分布を見ても、状況は改善されておらず、むしろ昨年よりも多年氷が小さくそしてもろくなっているように見えます。

今年も注意深く監視していく必要がありそうです。

融解期の終わり

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AME080923_NDPROD1D_L1C_ESC5KM_103_rgb5RGB_cut2.jpgしばらく横ばいを続けた北極海の海氷面積でしたが、ボーフォート海付近の海氷縁辺部で急激な結氷(右図の赤い丸の部分)が始 まり、ようやく増加に転じました。部分的には風による収束(海氷域の収縮)を今後も受ける可能性はありますが、結氷に伴う面積の拡大が本格化していくものと考えられます。

その結果、今年のAMSR-E観測による海氷面積の最小値は、先週お知らせした「9月9日の470.8万平方km」でほぼ確定です。JAXA/EORCの「地球が見える」にも関連記事が掲載されておりますのであわせてご参照ください。

減少速度が鈍ってきました

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先週の10日以降、北極海の海氷面積の減少速度が急に鈍りました。Graph0_seaice_extent_rate_zoom_eng20080917_lr.jpg

10-11日と、面積は一時的に増加に転じ、その結果、9日の470.8万平方kmが現時点での最小面積値となっています。 今週に入ってからも、面積はほぼ横ばい状態で推移しています。

右下の図は、暫定的に9月9日の海氷分布が今年の最小面積とみた場合に、昨年の最小時の分布と比較を行ったものです。主な特徴は、先々週の本ブログ記事の内容と変わっていません。 今年の最小面積値に関しては、もうしばらく様子を見たいと思いますが、来週には確定できるのではないでしょうか。P1AME20080909IC0_20070924合成_cut.jpg

アラスカやシベリアの様な広大な森林での全貌把握には、衛星による観測は不可欠です。 しかし、衛星による観測はどうしても誤差が含まれます。 そこで、森林火災検知の精度向上のため、JALと協力して火災観測を行っています。 今年の観測は9月12日で終了し、観測期間中に263件の観測報告を頂きました。 観測地域の内訳は252件が大火災の起きたシベリア、10件がアラスカ、1件が カリマンタン島です。 下図では、今年多発したシベリアの火災発生状況を示しています。 青線がJALの欧州線航路、 小さい飛行機マークがJALによる森林火災観測時の航空機位置、 そこから伸びる黒線が火災のあった方向、 黄色い楕円形が火災を含むと考えられる範囲を示しています。
シベリアに火災の報告件数が多かったのは、アラスカでは森林火災が少なかった一方、 シベリアでは火災が多発していた事によります。 下図をご覧ください、4月、5月、6月と、雪解けで春の到来が北へ向かうにつれ火災も 北へ移り大きな面積が焼失しました。

日本では春はみずみずしい緑が印象的ですが、北方林では、春になっても冬に寒さで 凍った地面がまだ解けず、木々は根から十分な水を吸収できません。 シベリアで落葉松が多いのは、春先の乾燥に耐えるためとの事です。 そのような訳で、春は北方林では森林火災が起きやすい季節なのです。
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2008年4月(赤:火災検出地点)
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2008年5月(赤:火災検出地点)
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2008年6月(赤:火災検出地点)

長くなりそうな融解期

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9月も第2週に入り、海氷減少は、徐々にペースを下げてきました。しかし、減少の速度自体は、この時期としては、過去6年間でも最高クラスの速度で依然推移しています。Graph0_seaice_extent_rate_zoom_eng2_20080910_lr.jpg

先週3日に本ブログを更新して以降、この1週間で、ほぼ本州一つ分の海氷が減ってしまいました。昨年記録された最小面積までは、あと日本列島1.2個分のところまで、今年も減少しています。

もしこのままのペースで減少速度が推移していけば、融解減少期間が例年より長くなることで、今年の最小面積を記録する時期が後ろにずれることが予想されます。その場合、昨年の最小面積にかなり近づくことも考えられます。

2007年の最小記録に迫る勢い

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9月に入っても北極海の海氷の減少は続いています。9月1日時点の海氷域の面積は、昨年に引き続き、ついに500万平方kmをきり、衛星観測史上2度目の400万平方km台に突入しています。

 

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今年は、昨年(2007年)に見られた7月の急減こそ見られませんでしたが、右の図からも明らかなように、海氷の減少曲線は7月から8月までほぼ直線的に下降してきていることが分かります。これは、例年だと8月後半に減少傾向が鈍ってくるのとは対照的な振る舞いです。この特異的な減少傾向によって、一時は大きく離されていた2007年の減少曲線に、今年も急速に迫ってきています。

 

 

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右図は、9月2日時点の海氷分布を、昨年の同じ日の分布(赤色で示しています)と比較したものです。この図からも、分布の形こそ昨年と違いますが、全体の面積はほぼ匹敵する小ささになってきていることが分かります。

昨年は、シベリア側の海域の海氷が大きく後退しましたが、今年は、カナダ寄りの海域の後退が激しく、一方シベリア側には昨年よりも多くの海氷が残っていることが分かります。また、昨年はグリーンランドの東岸沿いに大西洋方面に流れ出す海氷が多く見られていましたが、今年はあまり多くありません。

北極点からグリーンランドにかけての海氷域では、夏の間に融けていた氷表面の再凍結がすでに始まっていますので、まもなく海氷減少の速度が鈍ってくると考えられます。

海氷の減少速度は依然高いまま

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北極の海氷は、8月下旬になっても、依然減少速度を鈍らせることなく減少を続けています。8月25日には、昨年更新された前最小記録(2005年9月22日の531.5万平方km)を今年も下回っています

Graph0_seaice_extent_rate_zoom_jpn.jpgのサムネール画像右図は、海氷モニタの海氷面積数値データから作成した、海氷が最も融解する6月から9月までの海氷域の面積の変化率(1日毎の変化量)をグラフにしたものです。

0より小さいマイナスの値は、海氷が減少していることを、プラスの値は、海氷が増加に転じていることを示しています。

例年、8月の中旬を過ぎると、海氷の減少速度は鈍り始めます(つまり、7月以降、変化率で-5~-10万平方km/日前後で推移してきたものが、例年であれば、徐々に0に向かって上昇を始めます)。しかし、今年の変化率は、グラフ上に赤い太線で示しているように、8月下旬になっても10万平方km/日を超える高い減少率が記録されるなど、依然高い減少速度で減少を続けています。

果たして、昨年の最小面積記録(425.5万平方km)にどこまで近づくのか、あるいは、越えてしまうのか。いずれにしても、北極海の海氷は、今年も、例年にない振る舞いを見せているといえるのかもしれません

融解期を迎えた北極海の海氷

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今年も北極海の海氷が、融解期を迎えています。

昨年は、日本が猛暑に襲われたお盆の8月15日に、北極の海氷面積がそれまでの最小面積記録を更新し、その後9月24日には、観測史上最小面積(425万平方km)を記録したことをご記憶の方も多いでしょう。

今年は、昨年ほどの速いペースでは減少していませんが、それでも史上2番目に小さい面積を保ちながら、徐々に融解しています。

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今年の夏期の海氷融解のペースが、昨年よりも遅い理由の一つとして、今年は、日照時間が長くなる6-7月の天候が悪かったことが挙げられます。昨年は、北極海のアラスカ寄りの海氷上で6月から異常な晴天が持続し、7月に入ってから急激に海氷面積の減少が始まりました。しかし、今年は、6月から曇りの日がつづき、日射による海氷表面の融解がやわらげられたと考えられます。

しかしながら、"今年4月の海氷状態"を見ると、北極海の海氷は、年々薄く、もろい状態へと変化を遂げてきている様子が分かります。この夏の海氷も、一見すると曇りがちの天候によって全体の融解が遅くれているように見えますが、詳細に見ていくと、北極海のあちらこちらで、海氷に隙間ができ始めている様子が分かります。

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右の画像は、JAXAが開発した高性能マイクロ波放射計AMSR-Eというセンサが今年の8月17日に観測した北極域の画像で、白く見えているのが北極海に漂う海氷や一部の雲を表しています。北極点に近い東経140度北緯85度のあたりの海氷域にまで、隙間(黒くなっている部分)ができている様子が伺えます。

融解にともなう海氷面積の縮小は、例年、9月半ばまで続きます。しかし、8月下旬以降は、北極域の気温が下がり、夏に融けてぬれていた海氷の表面も再び凍り始めるなど、海氷縮小のペースは徐々に減速し始めます。したがって、通常であれば、今年の海氷面積が、昨年の面積にまで減少することはないでしょう。

しかし、上でも述べたように、今年の北極海の海氷は非常にもろい状態になっており、今後の天候次第では、さらなる海氷縮小が起きる可能性も否定できません。今後1ヶ月の間は、注意深い監視が必要です。

hs.gtopo.ak_laea.ALL.2008-07-13.m.jpg毎年アラスカで頻発しているはずの森林火災が、今年は非常に少ない様です。原因は雨が多く、また気温が低いために落雷で火が着いても燃え広がりにくい様です。

それゆえ、火災そのものの観測は限られますが、昨年までの森林火災の焼け跡、虫害に遭った林や健全な林など、森林火災に関係した各地域で観測を行っています。今後、各地域で分かったトピックをご紹介したいと思います。

北極圏研究Blogオープン

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こんにちは。IARC-JAXA北極圏研究プロジェクトの永野です。

この度、北極圏研究の最新情報をより早く、より身近にお伝えするためにBlogを開設しました。

昨今、地球環境問題への関心の高まりを受け、我々の研究対象である北極海氷や森林火災に

対する注目度が高まっていることを実感しております。北極圏で今、何が起こっているのか。

少しでも多くの皆さんに分かりやすくお伝えできるよう、プロジェクトメンバー一同努めてまいります。